冷静と情熱のあいだ

はてな匿名ダイアリーにこんなエントリーがあった。

昔つきあっていた恋人と久しぶりに連絡を取って、旅行に行ってきたという話を男性視点・女性視点の双方からうまく捕らえている。同じ人が書いたのか、仲間で別々に書いたのか、全然別の人がパロディしたのかよくわからないけど、両方とも淡々とした語り口で、文章全体に切ない感じが漂っていて、じーんときた。

これを読んで、「冷静と情熱のあいだ」という小説を思い出した。この小説は、辻仁成が男性視点から、江國香織が女性視点から、描いている。同じ出来事もそれぞれの視点から見ると違ったように見えて、それぞれに感情移入してしまい、すごく切ない気分になったのを思い出す。

物語って、どうしても主人公の視点になってしまうけど、主人公以外の登場人物にも文章には描かれていないそれぞれの物語があるはずで、それを強く痛感させてくれたのが「冷静と情熱のあいだ」だった。脇役の物語は、主人公のそれと同様に崇高で、その人にとっては唯一のものなのだ。

同様に、世の中にもすごくたくさんの人がいて、それぞれが必死に自分の物語を生きている。それぞれ、小説になるような話ではないのかもしれない。だけど、一人ひとりにとっては、その人生は唯一のものなのだ。僕は、特に渋谷のスクランブル交差点を眺めているとき、それを強く感じる。信号が変わるたびに、すごくたくさんの人が動きだす。その人の数だけ、人生があって、家族があって…。

あー、何だかよく分からなくなってきた。ともかく、僕は僕の物語を必死に紡いでいくしかないのかな。