技術経営戦略学専攻の海外研修

9月24日から30日にかけて、アメリカ西海岸へシアトル2日間、サンフランシスコ3日間の日程で研修に行ってきた。日本に帰ってきてから、1週間が経ってしまったけど、まとめてみる。

この研修は、東京大学大学院工学系研究科技術経営戦略学専攻にて行われたもので、修士課程の学生21人が参加した。本当は、修士1年が参加できるものなんだけど、僕は教授に頼み込んで、アシスタント的な立場で付いていかせてもらった。その分、いろいろと取りまとめる仕事は頑張ったけど。

ちなみに、この研修はトランスコスモス社の寄付*1によって、実現したものである。トランスコスモスの皆様、すばらしい研修をありがとうございました。

内容は、主に現地のIT企業、大学を視察であった。具体的には、シアトルでBoeing、Microsoft、サンフランシスコ近郊(主にシリコンバレー)でGlobal Catalyst Partners、Stanford University、GoogleIBMを見せていただいた。

全体的な感想としては、もうちょっと長い時間かけて、見てみたかったというのが正直なところ。各企業長くても3時間の訪問だったので、表面的な部分しか見ることができなかったのは残念であった。

しかし、海外を意識するきっかけとしては、十分すぎるほどよい刺激を受けた。僕は、今まで日本の殻の中にこもって生活してきて、英語も苦手だし、日本が好きだしとか言い訳しながら、意識的に海外から目を背けていたところがあった。でも、最近になって、もっと今まで触れてこなかった異文化に触れてみたいという気持ちを強く持ち始めていて、来年から働く会社を選んだのもそれが大きく影響している。

僕は日本が好きだし、日本の発展に貢献したいという気持ちを強く持っているけど、そのためには一度、海外に出て、全然違う文化の中で育ってきた人たちと触れ合い、客観的に日本を見つめてみたいと思っている。今回、アメリカに研修に行った5日間だけでも、日本との文化の違いを感じたし、一度、日本から出て、外国で年単位で生活してみたいという気持ちをいっそう強く持った。

卒業を半年後に控えた今の時期に、そのような刺激を受けることができたのは、非常によかった。まだよく分からないが、今後の人生を送る上でも、結構大きな学びになったのではないかと思う。今回の研修旅行で感じたことは、これからの人生でじっくり消化していきたい。

以下、遊びっぽい内容も含めて、訪問箇所ごとにまとめてみた。

Boeing

今はシカゴに本社を移してしまったが、シアトルに大きな工場を構えているBoeing社。その工場見学ツアーに参加した。

その工場は、世界で一番容積が大きな建物らしく、サッカーコート175個分の広さらしい。上の方からの見学で、細かいところまでは見れなかったんだけど、工場内を自転車で移動している人がいたり、ジャンボジェットが工場内に余裕で入っていたりとか、ともかくでかかった。

次世代中型旅客機の787 Dreamlinerを作っているところも見ることができた。これは、従来のアルミニウム合金ではなくて、炭素樹脂がたくさん使用されている飛行機で、重量は従来の半分、燃費は22%減というもの。最近、飛行機の燃料代も高くなっているし、環境負荷への取り組みは世界的な流れか。

資料館のようなところに展示してあったものを見ると、本当に本体も炭素樹脂でできているみたい。東レ日産自動車が提携して、炭素樹脂を使って、重量を1割削減した車を開発しているようだけど、将来的にはいろいろなところに炭素樹脂が広がっていきそう。

Microsoft

未来のオフィス環境

Visitor Centerにて、Microsoftの提案する4〜7年後の未来のオフィス環境を体験させてもらった。

ダブルスクリーンやタブレットPCなど、使われていたけど、基本的なデバイスとしては普及しているものと変化がなかったので、そこまで進歩しているイメージではなかった。Microsoftはソフトウェアの会社だから、それはしょうがないのかもしれないけど、未来というと劇的に入力・出力デバイスが進化している様子を想像してしまう。比較するなら、iPhoneを触ったときの衝撃の方が大きかったなぁ。

とはいっても、4〜7年後って、結構すぐにやってくるし、4年前のPC環境と今のものを比べてもそこまでの大差はないような気がするから、あのくらいの環境が実現できていればちょっとは便利になっているのかなと思った。20年とかもっと長いスパンの未来も描いているだろうし、よかれ悪かれOSの世界を引っ張っていくであろうMSがどのようなビジョンを描いているのか見てみたかったな。

雑学

シアトルの一帯だけでも、3万5千人が仕事をしているらしい。そのため、飲食物の消費だけでも果てしない量です。

  • 社員食堂利用者:29573人/日
  • 社員食堂のピザ消費:3637枚/日
  • ソーダ類消費:99万缶/年
  • ジュース類消費:53万缶/年

ちなみに、社員専用売店にも入らせてもらったのだが、Windows Vista Ultimateの社員価格は45ドル。や、安い…。

Global Catalyst Partners

大澤孝治さんという日本人がパートナーをしているベンチャーキャピタル三菱商事に入社してから、現在に至るまでの経緯、投資案件の発掘、デューデリジェンスで見るポイントなどを話していただいた。

起業家として成功する人とはどのような人か、キャリアディベロップメントについてなど、アドバイスもいただいた。

Stanford University

ともかく広くて、きれいなキャンパスだった。建物がレンガ色ではないので、重厚な感じはしないけれど、歴史を感じさせてくれる。

スタンフォード大学のホームページを調べたら、US-Asia Technology Management Center主催の公開セミナーをやっていたので参加。内容は、アメリカ、中国、日本において、政府から大学・企業の投資、企業・大学の連携を比較するというようなものだった。日本では大学発ベンチャーが弱いとか、技術移転におけるSuper Starがいないとか、いろいろ耳の痛い話題もちらほら。

このセミナーは実は授業の初回だったらしく、そこからもっと発展した内容をやっていく模様。授業後には、簡単な懇親会的なものがあって、そこで現地在住の日本人の方ともたくさんお会いした。スタンフォードの大学院生もいたし、日本企業の現地法人に出向されている方も数人いた。大学のセミナーが、大学内だけで閉じていなくて、現地の人たちのネットワーキングの場になっているようだ。シリコンバレーの中心にスタンフォード大学があるということを実感した。

東大も、卒業生を含めて、社会人の人がたびたび大学を訪れて、大学の中の人といろいろディスカッションをして、知の交流が生まれるような雰囲気にできていくと、とても面白くなると思う。

Google

まず、食堂でご飯を食べた。実はGoogleの食堂に行くのは一番楽しみにしていたんだけど、噂に違わぬ、すばらしい食堂だった。

社員の方の話を伺った後、オフィス内見学。やっぱりバランスボールが転がっていたり、壁中に写真が貼られている場所があったり、遊び心を感じるオフィスだった。


IBM Almaden Research Center

世界に8つあるIBMの研究所のうちの一つ。シリコンバレーの南端にある。サービスサイエンスナノテクノロジーセカンドライフについて、IBMの取り組みを話していただいた。

Pike Place Fish Market

シアトルのPike Place Marketという市場にある、シアトルで一番有名な魚屋。サーモンやカニを注文すると、レジまで投げてくれる。魚を買いに来た人よりも、魚を投げるのを見に来た人の方が多いんじゃないかというくらい、周りに人だかりができていた。とりあえず、下の動画をごらんあれ。

経営者は日系人のジョン・ヨコヤマ氏。その経営哲学はトヨタルイ・ヴィトンなどの大企業でも社員教育に採用されているほどらしい。そのポイントは以下の4つ。

  • Choose Your Attitude(態度を選ぶ)
    • 仕事はする態度を選ぼう。辛い仕事も、自分次第でやりがいも出る。
  • Play(遊ぶ)
    • 仕事をしながら楽しむ要素を見つけ、それをエネルギーにしよう。
  • Make Their Day(人を喜ばせる)
    • 顧客満足はまず顧客を楽しませることから始まる。顧客と自分を喜ばせよう。
  • Be There(注意を向ける)
    • 目の前にある仕事に誠心誠意の気持ちで尽くそう。仲間と顧客にきちんと向き合おう。

店員さんたちは、ともかくテンション高かった。その内容は本としても出版されていて、日本語にも訳されているようなので、読んでみようと思う。

フィッシュ!―鮮度100%ぴちぴちオフィスのつくり方

フィッシュ!―鮮度100%ぴちぴちオフィスのつくり方

Starbucks Coffee

シアトルにはともかくカフェが多かった。1区画ごとにスターバックスがあるんじゃないかというくらい、スターバックスのロゴを目にした。

前述のPike Place Marketには、スターバックスコーヒーの一号店があるのだが、一号店のロゴは世界でここでしか使われていないらしい。

それが、これ。

とりあえず、不気味。スターバックスのロゴはセイレーンといって、歌声で船乗りを誘惑して殺してしまう女の妖怪なんだけど、一号店のロゴは15世紀に描かれたセイレーンの絵をわずかな修正だけしてほとんどそのまま使っているらしい。本当に妖怪っぽい。

このロゴを使い続けていたら、世界中にスターバックスは普及しなかったかも。

Seattle Mariners

シアトル・マリナーズ vs クリーブランド・インディアンスの試合をマリナーズの本拠地Safeco Fieldで観戦した。

インディアンスは地区優勝が決まっていて、マリナーズワイルドカード争いから脱落しており、消化試合だったため、球場は結構空席が目立つ。

とりあえず、イチローのクリーンヒットを見れた。

あと、1-3で迎えた9回裏にマリナーズのベルトレが2ランホームランを打ち、延長に入って、寒空の中、延長12回まで続く白熱したゲームになったので、満足だった。結局、マリナーズは負けちゃったけどね。


Sushi Bar

ショッピングセンターみたいなところの中にスシを食べれる店があった。

そこで一番危険そうなメニューDragon Rollを頼んでみた。

これは、独創的。厨房の会話を聞いていたら、なんだか中国語っぽい感じだった。やっぱり、このスシは日本人には作れないだろうな。

AT&T Park

サンフランシスコで自由時間があったので、サンフランシスコ・ジャイアンツの本拠地、AT&T Parkに行ってみた。たまたま、スタジアム内を見学できるツアーがあったので、参加してみたのだけど、グラウンドにも下りることができたし、ベンチ、ロッカールーム、記者席にも入れたし、いろいろなところを見ることができて、大満足。