産学連携とイノベーション

卒業に必要な単位はだいたい揃っているのだが、今学期は一つだけ授業に出ていた。それが、「産学連携とイノベーション」という授業で、オムニバス形式でいろんな人が来るのだが、最後の回である今日の講師は、新領域創成科学研究科伊藤耕三教授だった。

伊藤教授の研究室で開発されたスライドリングゲルという素材は注目を集めており、アドバンスソフトマテリアルズという会社を立ち上げ、実用化に向け、動き出しているという話はいろいろなところで聞いていたので、さぞかしビジネスに対して熱心な方なのかと思いきや、すごく研究者肌の人であることに驚いた。

もともとは基礎研究をやっていて、たまたまスライドリングができるまでは特許を一本も書いたこともなく、企業と共同研究をしたこともなかったらしい。事業化までは分からないことだらけで、本当に大変だったといっていたが、これは素直な意見なのだろう。だまされそうになった話など、生々しい話が聞けたのはとてもよかった。

伊藤教授が特に強調して言っていたのが、会社を立ち上げるような人材がいないということ。実際に、アドバンスソフトマテリアルズの社長探しでも苦労したらしい。そして、大学発ベンチャーの経営者の条件として、ベンチャーで失敗した経験、人のネットワーク、研究者とビジネスを結びつけるバランス感覚を挙げていた。僕は、大学の技術を用いたハイテクスタートアップの経営に興味を持っていて、卒業後はとりあえず大学からは離れるが、いずれ大学に戻ってくるという道もおもしろいかなと思っている。

研究者とビジネスマンは基本的に違う生き物だし、そんな状況をうまくマネジメントしていくのは難しいだろうけど、そこのギャップを埋めていくのが僕の所属する技術経営戦略学専攻の役目だと思うし、自分もそこの領域で専門性を発揮していきたい。

僕は、これから数年は修行の期間と位置づけているのだけど、ともかくいろんな世界を見て、いろんな経験を積んでいきたいと思う。とりあえず、卒業までの間に、大学発ベンチャーについての知見は溜め込んでいこう。頑張らなくては。